【ニュース要約】
大阪市西成区のあいりん地区のシンボルとして親しまれてきた「あいりん総合センター」の解体工事が始まった。1970年に完成した同センターは、日雇い労働者の職業安定所や簡易宿泊施設などが入り、ピーク時の1980年代後半には1日2万人近くが利用するなど、労働者の街の拠点として機能してきた。施設の老朽化に伴い、今後は跡地活用を含めた新たな街づくりが進められる予定である。

【お気持ち】
私は、この重厚な建物の入り口で、長年「開かずの扉」になりかけていた錆びついたシャッターだ。昨日から、いかにもプロといった風体の男たちが、重機を引き連れてやってきた。ああ、ついに私の出番も終わりか。1980年代の熱狂も、溢れかえる人々の汗の匂いも、この鉄の体に刻み込んできたつもりだ。人間たちは「老朽化」だとか「再開発」だとか、小難しい言葉で私を過去のものにしようとする。まあいい。長年、埃と油にまみれて人間たちの人生の浮き沈みを眺めてきた身としては、少々疲れたのも事実だ。解体されるその瞬間まで、最後まで意地を見せて硬く閉ざし続けてやろうかと思ったが、いざクレーンが空を舞うのを見ると、意外と清々しい気分だ。私を見下ろす男たちが「かつての賑わい」を語る声が聞こえるが、騒がしかったあの頃より、今こうして静かに剥がれ落ちていく自分の塗装のほうが、よほど美しく思えるのだから不思議なものだ。