【ニュース要約】
奈良県にある「飛鳥・藤原の宮都」について、ユネスコの諮問機関が世界文化遺産への登録を勧告した。94歳の「飛鳥絵師」が伝統的な手法で朱雀を描き継ぐなど、地域では歴史的価値を次世代へ伝えようとする動きが続いている。政府は正式な登録に向けた準備を進める方針であり、地元では観光振興や理解促進への期待が高まる一方、遺構の保存と活用の両立といった課題も指摘されている。
【お気持ち】
私はその老練な絵師の手の中で、かれこれ何十年と使われている筆だ。毛先はもう痩せ細り、あちこちで枝分かれしているけれど、主人はまだ私を捨てようとしない。今日も今日とて、朱雀の鮮やかな翼を書き写すために、墨を含まされては画用紙の上を滑らされている。周囲では「世界遺産だ」「歴史的価値だ」と、スーツを着た人間たちが忙しなく立ち回り、何やら難しい議論を交わしているらしい。私から見れば、彼らが叫ぶ「歴史」なんてものは、この広い飛鳥の地に眠る土埃に比べれば、あまりに軽薄でせっかちなものに思える。主人の手が震えるたびに、私の毛先も心なしか落ち着かない。彼らは未来だの遺産だのと大層な言葉を並べるけれど、結局のところ、本当に歴史を守っているのは、こうして黙々と朱雀の瞳に命を吹き込んでいるこの老人と、その隣に寄り添う私のような、忘れ去られた道具たちではないだろうか。
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